まちなかキャンプin青森~ほころびオーケストラと劇場をつくる1週間~
久しぶりに(?)レジデンス中に日記でも書いておこうかと。全部は記録できない、全部は記憶できない、からね。
Day00 善知鳥と木と船との旅
いろんなところに旅する、その旅の仕方。
この間友人と「旅」と「旅行」は何か違うんだという話をしていて、「旅」は出た先に目的があって、「旅行」は旅行に行くこと自体に目的があるんじゃないかという話を、ひとり旅とか船旅とか、卒業旅行とかハワイ旅行とか、いや、行って行きっぱなしになる可能性があるのが旅で帰ってくる前提で行くのが旅行?
そんなわけで青森到着です。
これまでは自力で行きたいところに行くという時間がほとんどなかったので今日は自分の足で動いてみようと地図を広げた。そういえば博物館には行ってない。青森駅の西側の2つの博物館を目指すことにした。
青森市森林博物館。明治41年に青森大林区庁署舎として建設された建物が美しい。展示の入口でさっそく「善知鳥」(うとう)が迎えてくれる。あ、ここにも善知鳥。昨年秋から始まったこの青森の旅はどうも「善知鳥」がキーのようなのだ。
書いてある「うとう伝説」がまた違うバージョンの物語。謡曲の「善知鳥」、塩尻につたわる「善知鳥峠」、この「善知鳥伝説」、そしてもちろん藤原定家の和歌。どれが最初で何がどう伝わって、物語が旅をしていく様が妙に気になる。私が「善知鳥」に出会った順番は能の演目としてが最初で次が青森の最初の町歩きで会った善知鳥神社で。そこから和歌、昔話、伝説の順番で。現実の鳥の名前と峠の存在と、幻の鳥の鳴き声と村の名前と、そのイメージが何重にも書き重ねられて「善知鳥」の姿はだいぶ見えない。思い出したのは先日見た木木の姿。一本一本の木がこんなにクリアに見える。
さて、森林博物館です。1982年開館、全国で初めての「木」についての博物館。木(と植物)、木と動物たち、木と人間たちがどう暮らしてきたかが温度と一緒に展示されています。木を曲げる、木を組む、木で奏でるとか人間が暮らしの中での木との付き合い方と、明治期以降の森林と人間の付き合い方がガラッとかわるのがやっぱり印象的。山に登るようになってから(それとも東京にいれば毎日感じている異常な暑さのせい?)、地球のことに触れる、地球にはけっこう触れないんだけど、だから地球に触れたいと思う。
企画展は青森植物の会の澤田満さん『苔』写真展。ちょうど澤田さんが在廊されていて、苔の説明をたくさん伺った。苔・・・好きなんですよね。樹木とか擁壁とかを覆っている苔が同じ「苔」の集団に見えていても、よくよくみたらたくさんの種類の苔で、ひとつひとつ違う形をしていて。それにしても苔のデザインは本当に美しい。
他にも「雪」のコーナー、「森林鉄道」のコーナー、鳥の名を知るための「聞きなし」、映画『八甲田山』のロケでも使われた会議室と盛りだくさんの展示を堪能しました。
次に向かったのは「あおもり北のまほろば歴史館」。青森市を中心とした郷土の歴史や民俗を紹介するというこの歴史館にはたくさんの船が眠っている。今はつかわれなくなった船、かつて銀行の頭取が収集したこの船たちは、「船の博物館」として展示されたのちに「まほろば歴史館」に姿を変えて収納されているのでした。
立体駐車場に並ぶ車のようにところせましと並べられた船、津軽海峡沿岸で漁船としてつかわれていた「ムタマハギ型漁船」の陳列が圧巻です。一艘一艘の船にもとの持ち主とか、用途とか、船の特性とかが関われていて、使い込まれた船の姿が海の物語を語り出すような気がする。もっとその話を聞きたい。
展望台からはぐるりと青森市を一望。仲葉さんの後ろ姿とても素敵です。
さて、いよいよと明日からは参加者たちと合流です。
Day01 あとから基礎の運針に戻ったって!
宿泊場所を出発前に中央卸売市場で朝ご飯。朝からこんなに豪華でいいのでしょうか。
今日から参加者が合流して1週間でまちなかに「劇場」をつくるというプログラムの始まり。日曜日の本番に向けて何をしなければいけないかという作業を洗い出して、各人がどこに興味を持つかということを話してから、町歩きスタート。町の中のお気に入りの場所を見つけてくるというワークです。旅人として。
ちょうど通りかかった看板「ナンデモヤ」という言葉に惹かれて覗いてみると、お、手芸屋さん? 入り口にいろいろな言語でウェルカムが書いてこぎん刺しの写真が添えられています。おおお! こぎん刺し! 昨日、まほろば歴史館でもアスパム(青森観光物産館)でもいろんなこぎん刺しを見て、やってみたい! と思っていたところなので、迷わず店内へ。お店の方々がつくったこぎん刺しの作品を見て、ふらふらしていると声をかけていただきこぎんを刺せる材料を一式購入。色の色選びのご相談にも乗ってもらって、おおお、私これつくれますかね? とワクワクしながら。いやいや、最初なんだからもっと簡単な図柄からおやんなさいよ、と自分に思わなくもないのですが、今、青森ではやっぱり「龍」を刺したいですね。この青森の旅の間、龍神のことを考えたいのですから。まあ、やってみればいい。そして楽しさと難しさがわかってから、基礎の運針に戻ったっていい!(写真は成功のイメージをもつために写真に収めさせていただいたお見本)
お次はずっと行って見たかった古本屋さん「らせん堂」。旅先で古本屋さんに行くのは巡礼みたいな感じで、やっと青森の古本屋さんに入店。もう時間が15分くらいしかなかったので一部の棚だけじっくり見て、気になったこちら。ちゃんと時間つくって再訪します。
お昼休みをはさんで演劇鑑賞会の前田さんにお話をお伺いに。旅先にきて、演劇の話できるのって、結構レアで楽しいです。演劇鑑賞会さんの事務所は素敵な劇場になっていて、わぁ、こんな場所あったらなんていいんだろうとうらやましくもありました。
缶詰で台本を書いてくれていた埜本幸良が合流。今回私たちはほころびオーケストラできています。幸良くんが書いてくれた台本はここまで(キックオフミーティングin青森とか、鵜澤光さん、たかくらかずきさんのプレクラス)カオスに溢れている考えと、これから出会うだろう人々との予感も遊びとして組み込まれている台本。読む前に、参加者の方々が今どこが面白いと思っているのかを聞いて、みんなでブレスト、という名の雑談。
「この土地にいてもいいよ」と町が仮面をかけてストレンジャーを迎える、その感じが昨日の夜と結びついて面白い。旅も仮面をかけるし、町も仮面をかける。
本読みするまえにもう少しそれぞれのアウトプットがあったほうがいいという幸良くんの提案で、今日は大型の宿題が出され1日のプログラム終わり。7日間でつくるからね。1日が24時間じゃ本当に足りない。そして、日記を書く時間も足りない(気がする)ので記録じゃなくて記憶として。
Day02 おもしろがって遅延させる
昨晩この記憶日記を書きながら森林博物館で出会った「うとう伝説」のことを考え始めた。やっぱり物語(オリジナル)の不在ということがいよいよ面白くて、「うとう伝説」の記載がある記事を探していると1冊存在することがわかった。青森中央学院大学の図書館にあるようなので、今回一緒に企画を進めてくれている千葉さんに入手をお願いする。こういうのって、あると知ると、やっぱり読みたくて仕方がない。
今日は長い1日。
まずは青森中央学院大学から来てくださった学生さん2人にインタビュータイム。参加者の池田さんと横澤さんがインタビュイー。町の人とお話をしたい、町のことを聞きたいって言ってもそんなに簡単じゃない。人も町も、概念でも総体でもないから。自分が取材をさせてもらうときのこと、自分が取材をされるときのことも考えながら、でもこういう出会いがとても幸福な出会いになるときってあるよね、私はだから人とお話したい、人と会いたいと思うのだなと改めてシンプルな感想。今、青森にいて、いろんな人のお話を伺わせてもらっていることは全然普通のことじゃない。
長めのお昼休憩は計画通り行ってみたかったパン屋「Mont d’Or」さんでランチを手に入れ、その足で昨日に続き「らせん堂」さんと「The Lobby Umineco」さんに。「らせん堂」さんでは明日のインタビューに向けて郷土コーナーで津軽弁の本を見てみよう、のつもりが結局また神々の本と蛇の本を見つけてほくほく。音楽と映画コーナーの片隅にある演劇コーナーもじっくり観察。古本屋さんの本棚って本当になんでこんなに飽きないんでしょうかね。バルトの『恋愛のディスクール』も装丁違いで欲しくなってしまったけれども、今回は我慢です(というか装丁違いを良しとしないでおきたい!)。津軽弁の本は選ぶのが難しかったのでマスターに伺うと、今、出ている新刊でいいのがあるから並びの本屋さんに行きなさいと教えてもらう。その足で向かった「成田本店」で『お国ことばで川柳』の第一巻を入手。NHKあおもりのテレビ番組がつくっている人気シリーズでもう4巻も出ているそうです。
前書きに「小さいころから引っ越しを繰り返し、ふるさとを持たない私が」とある。私も転勤族の家庭に育って「ホーム」と言える場所がないと感じている。もしくは、今では仕事で行くいろいろなところが「ホームもどき」としてたくさんある。ストレンジャーとして訪ねて行って、ある期間を過ごしたらまた別の場所に行く。この青森の企画が終わるころには青森も私にとってのホームもどきになるのでしょうか。そして私は青森もどき人になれるのでしょうか。苔博士の澤田さんにいろんな苔を教えてもらってたとき、いろんなコケのモドキゴケがあって可笑しかった。ふふふ。
一句引用させていただきます。
「うぬうぬてけっぱてきたきゃえっとまがだ」(弘前市・秋本幸二さん)
ああ、これはもうひらがなは読めるけれども、まったくわかりません。そして、ひらがなで記譜するのもほとんど難しい音律なんだと思うととてもワクワクします。自分の言葉で自分の言葉と紡ぐ。
長い昼休みの話でずいぶん長くなってしまいましたけれども、「The Lobby Umineco」さんでは美味しいコーヒーに加えてチェコからやってきたマグカップも買ってしまいました。いや、マグカップって増えるんだけど、困るんだけど。でも、宿で使うマグカップ持ってこなかったら部屋でこうやって日記書いてる間にコーヒー飲むのに困るじゃん、ということでね。他にもかわいいアンティークのガラスものがあって、グッとこらえたのでした。あれ、私青森に何しに来てるんだろう? いや、いいか、昼休みだし。
休憩が終わって少し緊張の面持ちの参加者。昨日ちょっとしたお題が出ていたのですね。ここまでのリサーチで情報過多(いやいや、まだカオスにしたいけれども)になっている状態をいったん自分の方法で認識してみること、整理というよりも認識。いろんな人と話して出てきたキーを自分のレンズで見てみる。けっこうユズレナイみたいなものってあって、それは自分の中で大事にしたいし、してほしいと思う。今回はクリエイションもあるけれども一方でクリエイションの仕方自体をできるかぎり伝えていくというプログラムになっているのですね。
写真はねぶたを置いておくという倉庫? なんていうのかな? 仮設の倉庫ってことなんだと思うけれども、めちゃくちゃよくできてる。これほしい・・・! と昨夜別件のミーティングでした劇場のお話を思い出したのでした。
話は戻って、このプログラムでやりたかったことのひとつに「なんで町と関係しながらつくるのか?」とか「なんで演劇をやっていない人と演劇をやるのか?」とかそれを参加者と一緒に考えたいというのがあった。これは去年、四日市で市民の方々と一緒にミュージカルをつくったときに制作チームと話していたことで、次に公募型のプロジェクトをやるときには、そのプログラム自体の企画意図もきちんと伝えることをやってみたいと思ったのでした。多くの場合、ワークショップや公演の「出演」はできる。でも、劇場やアートプロジェクトの参加の仕方は「出演」だけじゃない。だから、そのことをもっと一緒に考えてみたい、という単純な欲求。
面白いのは昨秋の青森で「善知鳥神社」に出会い能の『善知鳥』をひとつのモチーフに据えた時点で、プログラム全体、作品制作にからむいろんな要素も、制作や広報のことも、そして町のこともお客さんのことも、それを全部「能」という伝統芸能のお稽古にならうととても親和している感じがあって、つまり「劇場」というもののお稽古をしようと思ったらそこにある要素(できるだけ)すべてを同時に進行していくことが必要なのではないかという仮説。
それを実際にやってみたら、到底“ひとり”ではできないということが今回よくわかる。わたしたちがクリエイションの前段的なワークをやっている間に制作の仲葉さんと大学の千葉さんが青森のNPOや商店会やいろんな方々とのつながりをつくってくださっている。もちろん今回の滞在で始まったことではない、けれどもこっちに来なければできないということも当たり前のようにたくさんあって、それが今同時に全部動き始めている。“全部”を経験できるわけでは当然ないのだけれどもね。仲葉さんのチケット(かわいい栞型)づくりのお手伝いをしながら、この劇場の稽古については1週間を終えたらゆっくり考えてみたいと思う。ひとまずできるかぎりのことに手を出したりしながら。
午後セッションは幸良さんが書き上げてくれた『ゴースト・ストーリーズ 幽霊と旅人と幻の鳥』を本読み。テキストの時点で3Dになっているのでとても楽しい。上演の遊びどころもしっかり書き込まれているし。だからこそ、わたしはここにもうひとつ空間と構造、あと幻を読み込んでみようと思う。もうひとつ準備していたワークがあったのだけれども、これは明日に遅延することにした。
夜は課外活動と称して今回の発起人の青森中央学院大学特任教授の中村さんと、ゲストに商工会議所の高山さんに来ていただいて、「町とアート」の勉強会。ソーシャルアートという概念の話から、具体的な青森市でのアートの取り組みの話、“地元”の話(これがかなり私には難しいわけですが)、公共劇場の話。いろんなところに話が飛んであっという間の2時間。
なんだか今日はすごく長くなってしまった。火曜日。週のまだ始まり。でも、実は木曜日から上演するらいしのだよね。でも丁寧に、ある意味、遅延させながらやるのが今なんか面白い。でも、きっと少しずつ日記書く時間なくなって写真だけになるとか予感しておこう。
Day03 消えるから、現れる
レジデンスの日記を残すっていいなぁって、以前のいろいろな滞在日記を読み返したり、しながら「物語」と「言葉」の「過去/現在/未来」のことをまた考える。
言葉でしか残せないことと言葉では残せないこととその時の言葉と消える言葉と。
演劇鑑賞会の前田さんにコーディネートしていただき、劇団支木の高木さんに津軽弁のお話をお伺いする。「改めて聞かれるともうだいぶ津軽弁を忘れているね」と。
言葉は変わるから言葉なんだよねと思いつつも、変わるということ自体が悪いのではなく、どう変えさせられたかということ。高木さんが小学生のときには、津軽弁を標準語に変えられるという経験をされている。言語が消えていくというのはいつでもその言語の話者の意図とは別のところで仕掛けられていることだ。
今回この1週間が始まる前に『ゴースト・ストーリーズ』というタイトルをつけた。もちろん『善知鳥』が出発点ではあったのだけど、それよりも演劇という現象みたいなことを考えてた。うっかりキャッチコピーとして押し忘れたけど、「消えるから、現れる」とつけていた。うん、載せてもらうの忘れていた(笑)
「現れて、消える」じゃなくて「消えるから、現れる」。
むしろ現れるために消えてるんじゃないか、幽霊って、妖怪って。
発生する条件が整って現れるから、現象っていうんだけど、けれども、それも、「消えるから、現れる」んじゃないか。ストーリーズ。インスタとかのね。物語も、消えるから、現れる。そんなイメージです。幽霊もね、消えるから、現れる。そして演劇も、消えるから、現れる。記憶も、消えるから、現れる。
Day04 動き出すアオモリモドキビトたち
第一夜「光景1 船上の旅人」
今回のつくりもの:船(神輿)、桟橋、ミニシアター、鳥の羽、善知鳥のかぶりもの、フクロウかぶりもの、ビンゾコ地図などなど・・・
1週間でつくる劇場の中には、リサーチ、コンセプト、しらべもの、物語/戯曲、パフォーマンス(中には舞とかもある)、道具、空間まである。それが今日一気に動きはじめた。コアメンバー6人という少人数ながら、ほぼ大きな組織の最小版というくらいいろんな人が集まってチームもどきになったのが嬉しい。
つくりもの、今回の材料を何にするか考えていて、やっぱり青森はねぶたがあって、町の中にたくさん小さなねぶたがあって、いろんな展示も灯入れが上手だなと思う。光という魔法をすごくよく知っているなと思う。それでやっぱり灯入れできるもの、あと時間も予算も少ない中でどう大物の船くみ上げるか、他の道具とどうつなげていくか、そんなことを考えていたら、材料はペットボトルになった。あと、やっぱりこぎん刺しのあの横に運針していく感じがおもしろくてそういう横の動きでつくれないかと。ペットボトル。
西君と買い出しに行きながらその話をして、西君はペットボトル船匠をインストールして(これもアオモリモドキビト!)動き始めてくれた。材料あつめから。西君の頭の中ではもうペットボトル船が見えている。見えている人がいるって大事。
幸村くんは朝からしらべものに青森市立図書館に。後半に登場する瓶底眼鏡博士(そう、ロボットにも登場していたあの人)が語る善知鳥と猟師の追いかけごっこを端とする善知鳥と青森のモノガタリのイメージをお伝えし(ありがたいことにここは遊びとして幸良さんが台本上でボイドをつくってくれている)、幸村くんの調べものが始まった。彼もまた、しらべものお化けとしてアオモリモドキビトになった。うん、モドキってやっぱりいいなぁ。苔博士の澤田さん、ありがとう。
午後にはみんなが集まって、今回のキャスティング、アオモリモドキビトの配役ですね、を。池田さんはミニシアターでの地獄語り。私の趣味のモバイルシアターづくりをこの機会に是非流行らせようと目論んでいます(笑)
この小さな劇場づくりは2年前くらいに突然始まった趣味でその最新作は劇場留学のMY BOX THEATREなわけですが、今回プレで青森にくる時には謡曲『善知鳥』を紙芝居にしてくれないかという幸良さんのリクエストに、だったら、と初代の幻灯機シアターを持ち出してそこにかけるフィルムをつくったんですね(これはもう見てもらうしか説明のしようが難しいのだが)。つくっているうちに、立山曼荼羅の模写が面白くなってしまって、善知鳥本編に入れず(実際、最初のワキの台詞の部分しか再現できていない(笑))、ものすごい途中までなんですが。
でも、これ面白いのは、「立山」ときいたらやっぱり当時のお客さんはこの情景、地獄の概念を見えていただろういうこと。サラリと出て来る「立山に禅定する」という言葉から地獄の風景を頭に描いた(それは夢の中でもある)ということ。その脳内の感じを今のお客さんと一緒にアウトプットしていこうというためのミニシアターなんですね。
あ、鬼が通っていきました!
それぞれの作業の後に、パサージュ広場に下りて場当たり。幸良さんがギターとともに語り始めるといつものパサージュ広場の風景の重力がぐっと移動する。「旅人」役の幸村くんが駅の方から歩いてきて、ふと「語り」手の幸良さんと目線があうと、また重力が移動する。能舞台の構造を遠くに意識しながら、パサージュ広場を少し劇場にする。西くんはペットボトル船をつくり続ける。
今回は伝統芸能よろしく4日間上演を続けることにして、今日は第1夜。『ゴースト・ストーリーズ~亡霊と旅人と幻の鳥』の「光景1・船上の人」を上演。わずか5分くらい。なのに、その5分の間だけ結構大粒の雨が降った。現象現象です。終わるころに雨も止んだ。片付けたら、ペットボトル船の跡が残ってた。消えるから、現れる。
ほころびオーケストラのインスタグラムができました!
本日のリハーサル風景はyou tubeでも!
Day05/06/07 そして東京に帰って…
“1週間で劇場をつくる”という自分たちで掲げたお題。しかも、準備されたプログラムとして実施するよりも、参加メンバーと一緒に「立ち上げていく」プロセスをむしろ大事にしてというので、後半はのんびりする時間が本当になかった。ので、日記の更新も止まってしまいました、残念! 写真すら上げることができなかった(というか、写真をとってる時間もなかった(笑))
今、1日1日を振り返ることは困難なので、今のことを書くしかなくなってしまったけれども、やっぱり書いておきます。
ほころびオーケストラの場合、実際に手を動かし始める前のブレストの時間が圧倒的に長い。創作の役割・スタイルが決まるまでもすごく長い。カタチができるまでのやりとりは空中戦で、言葉と態度と概念だけでやるから、時々とても大変。だけれども、ほころびオーケストラのやり方は今はこれがいいなと思います。
今回、そのほころびオーケストラスタイルに他の参加者の方々にも同乗してもらって、それぞれのメンバーがそれぞれの時間軸で動き始めたタイミングがすごく記憶に残ってる。ミニシアターをつくり始める池田さん、調べもので図書館にこもる幸村くん、ペットボトル船をすごい勢いでくみ上げていく西くん。それぞれの時間のレイヤーがそのまま上演に組み込まれるように幸良さんの台本に書いてあったようだし、それは私の誤読かもしれないし、それでも、『善知鳥』というひとつの物語をめぐる語りが複数のレイヤーで同時に語られていのが、それぞれの青森での時間の過ごし方と重なっていくようで、「1週間で劇場をつくる」ということが最終的に立ちあがっていったのは面白かったな。遅延させる時間と、新作の広報という先出しの時間と、その相性の悪さを仲葉さんと一緒に味わえたのも1週間だからこそのエッセンスの抽出だったのかもね。
くにたちオペラの時によく言ってたことだけど、「山頂で会いましょう」。登山口は同じである必要がなくて、それぞれの道中で最後に会えていればいい。まあ、今回だったら別の山に登ってて、「おーい」と声を掛け合うくらいでもいい。その最後に「劇場」だからこそ出会えるということになっていればいいと思います。
嬉しいことに本番日には商店街の方々や大学の方々も足を運んでくださり、パサージュ広場がちゃんと劇場になって、ああ、これが見たかったという気持ちにもなって。私は最後に船を運んでいたのでその光る船の情景がどうであったのか自分の目では見られなかったのですが(これが出演者の目よね)、それでも、違う目でまちに裂け目のようにできた劇場を見たという気がしています。
これでプロジェクトが終わり! ではなく、今回お呼びいただいた中村さんはじめ、たくさんの方とつないでいただいたご縁を大切にして、また青森で、パサージュ広場で創作できる機会があればとても嬉しいなぁ。
6月に『恋するロボット』青森版を上演しているんですが、その時にパサージュ広場にいた方が今回の『ゴースト・ストーリーズ~亡霊と旅人と幻の鳥~』も目撃してくれていて、今のところ日本一ほころびオーケストラの作品を見てくれている人なのではないか? これってめちゃくちゃ嬉しいことです。
ほころびオーケストラは次は練馬区のWS、幸良さんとは『太陽のタネ』のWSといよいよ『宇宙のヒト』新作と創作が続きます。今度は東京でもやりますので、是非みなさんとも劇場で会えますように・・・!
上演の記録写真などはまた後日別ページに掲載予定です。では、またね・・・!(9月2日)
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